今回は、「逆接」に関するお話です。
逆接とは、それまでの話の流れを断ち切って、否定したり打ち消したりする文の書き方です。書き方は、「しかし」「ところが」「ただし」といった接続詞を用いる方法と、「~だが」「~だけれども」「~にもかかわらず」といった形で一文の途中から始める方法があります。
例文A
1:彼はいつも朝7時に出社する。しかし、今日は遅刻してきた。
2:父は仕事で忙しいが、明日は一緒に遊んでくれる。
逆接による表現は、文を強調する効果があります。例文A-1では、接続詞「しかし」のあとの文が本題です。「彼は今日遅刻してきた」という事実を伝える文になっています。そこに前文として、「彼はいつも朝7時に出社する」と書くことで、「普段はきちんと出社している彼が遅刻するというめずらしい出来事」について伝えようとしていることがわかります。
例文A-2も同様に「父が明日一緒に遊んでくれる」が主題であり、「父は仕事で忙しい」という前文から、「父が一緒に遊んでくれるのは特別な出来事」であると強調されています。
このように、逆接から始まる文は、それ以前の文によって強調される効果があるのです。そのため、逆接を用いる際には、「きちんと強調される内容の組み合わせ」になっているかが重要です。
逆接の基本は「Aである。だが、Bだ」という文の構成であり、AとBが対照的な内容でなければ強調の効果が得られません。
例文B
1:彼はいつも寝坊している。しかし、今日は遅刻してきた。
2:父は子煩悩であるが、明日は一緒に遊んでくれる。
例文B-1では、「彼はいつも寝坊している」から「今日は遅刻してきた」につながっています。ところが、「彼はいつも寝坊している」と「遅刻してきた」は対照になっていません。そのため、逆接を用いても内容が強調されません。例文B-2も同様に、「子煩悩」と「一緒に遊ぶ」が順接的な組み合わせのため、逆接の文脈にあること自体が不自然になっています。このように、逆接による強調の効果は、「前後の内容の組み合わせ」によって決まるのです。
逆接による強調の効果が発揮されるのは、前後が対照の場合以外にももう1つあります。
例文C
今日食べた高級料理はとても美味しかった。だが、妻の手料理のほうが好きだ。
例文Cでは、「高級料理が美味しい」と「妻の手料理が好き」は対照の関係ではありません。しかし、「高級料理」と「妻の手料理」が比較の関係にあります。本題は「妻の手料理が好き」であり、それが「とても美味しい高級料理」と比較しても変わらないと強調しているわけです。
逆接による強調効果は、前後の内容に大きく左右されます。それに加えてもう1つ、強調の効果がきちんと現れるかどうかを決める要素があるのです。それは、「使われる頻度」です。
例文D
今日もいつものように学校に行った。ところが、友人のたかしが風邪をひいて休んでいた。しかし、クラスメイトは気にする様子もない。だが、僕は心配でたまらなかった。でも、実際には何も言わずに一日を過ごしたのだ。けれども、明日はきちんとお見舞いに行こうと思う。
例文Dは、最初の一文以外がすべて逆接で書いています。こうなると、一体どこが強調したい内容なのかが分かりません。友人が休んでいたことに驚いたことか、クラスメイトが気にしないことにがっかりしたのか、はたまた、結局何もしなかった自分を責めていることか……。
逆接は文を強調するために、とても有効な書き方です。けれども、使い方や頻度を誤ると効果がなくなるばかりか、文章そのものが読みにくかったり理解しにくかったりしてしまいます。逆接表現をきちんと使えるようになれば、伝えたい内容をしっかりと伝えられる文が書けるようになるでしょう。
Webライター・方山敏彦の右腕。左腕も勿論ありますw
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