書評:『学問のすゝめ』(福沢諭吉/岩波文庫) 初編だけ解説!

書評

こんにちは、オーズの方山です。

言わずと知れた名著『学問のすゝめ』について取り上げていきます。

本書は全17編で構成されていますが、今回は特に有名な初編についてのみ解説します。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」から始まりますが、この「言えり」というのは、「言われている」という意味なので、実は本題は次からなのです。

「されば天より人を生ずるには、万人は万人皆同じ位にして、生まれながらに貴賎上下の差別なく、(中略)されども今広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや」

「人学ばざれば智なし、智なきものは愚人なりとあり。されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとに由(よ)って出来(いでく)ものなり

とあります。つまり、人は生まれながらに偉い・偉くない、金持ち・貧乏といった区別はないということですね。

学問をする人が貴人・富人となり、学問をしない人は貧人・下人となると著者は説きます。

そして、学問というのは単に難しいことを知っているだけではダメで、実がない学問は人の心を豊かにすることはあっても、崇め奉るものではないと。

著者は「人間実用日用に近き実学」をまず学ぶことを勧めています。

具体的には、文字を習って手紙の書き方を知り、簿記や会計学が大事であると触れています。

地理学・究理学(哲学)・歴史・経済学・修身学の重要性を強調しており、広く実学を修めることによって、自主独立につながると述べているのです。

さらに、学問をするときには「分限を知る」ことが肝心と続いています。

ここで言うところの分限とは、「天の道理に基づき人の情に従い、他人の妨げをなさずして我一身の自由を達すること」とあります。

自由とワガママの境界線は、他人を妨げるかどうかという点にあるとのことです。

公共の福祉という言葉が現代にもありますが、他人の自由や財産を脅かさないかぎりにおいて、個人の自由は認められるというものでしょう。

そして、その境界線を知るためにはよく学ぶ必要があると。

本書の初編はわずか8ページで構成されていますが、一文ごとに著者の漲る思いが伝わってきます。

この本を読んだからすぐに何かが変わるというわけではありませんが、少なくとも学問をする人間が、基本となる軸に何を置いておくべきかがよく分かります。

学問とは学びたいと思ったときに、学ぶのが最適です。何歳であろうが、学問をするのに終わりはない。

しかし、学問を修める順番が大事であることを本書は気づかせてくれます。

初編を皮切りにそれぞれの編が展開されていきますが、福沢イズムとも呼ぶべき思想が随所に見られるのが本書の特徴です。

学びたい!と思ったときに、紐解いてみると思いがけない気づきがある1冊です。

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