「こと」ばかりの文章は読みにくい!

テクニック(右腕)

今回は、「こと」の使い方についてのお話です。

文章を書いていると、つい使ってしまいがちな表現に「~すること」「~なこと」があります。「話すこと」「行動すること」「選ぶこと」など、用言(いわゆる動詞)を体言にするときに用いられます。用言をモノのように表現できるため、非常に便利な表現です。

例文A

毎日歩くことは、健康維持につながります。

英語を話すことは、とても難しいです。

誕生日を祝ってもらうのは、うれしいことです。

このように、利用できる機会はとても多く、話し言葉などでも頻繁に使われます。しかし、以前に書いたように、文章において「同じ表現」が繰り返されるのは避けるべきです。それは、「こと」についても変わりません。何度も繰り返し「こと」が用いられると、文章が読みにくくなります。

例文B

今日は、朝からクラスメイトと一緒に登校することになった。彼は、今度のテストのことで相談したいことがあるというのだ。僕は、話を聞くことにしたが、どうも相手の歯切れが悪いことに苛立ちを覚えた。結局、時間ばかりがかかり遅刻することになりそうだったので、話を途中で切り上げることにした。また、放課後に朝の相談について聞くことにする。

「こと」の使い方自体は間違っていませんが、とにかく数が多く8回も使用しています。特に、一文で2回以上使用している文は、非常に読みにくいです。

「こと」を使って書くのは決して悪くはありませんが、その前に「ほかの言い回しは使えないか」を考える必要があるでしょう。

例文C

今日は、朝からクラスメイトと一緒に登校した。彼は、今度のテストについて相談があるというのだ。僕は話を聞いたのだが、どうも相手の歯切れが悪く、苛立ちを覚えた。結局、時間ばかりがかかり遅刻しそうだったので、話を途中で切り上げた。また、放課後に朝の相談について聞いてみようと思う。

例文Cでは、例文Bに含まれていた「こと」をほかの言い回しに変えました。たとえば、「相談したいことがあるというのだ」は「相談があるというのだ」に変更しています。このように、「こと」を単純に外してしまえるケースは多いため、「本当に必要か」を考えてから書くことが大切です。

ほかの言葉に置き換えた例としては、最後の「聞くことにする」を「聞こうと思う」にした点があげられます。この場合は、単純に「こと」だけを取り除くことができなかったため、このような言い換えを行ったのです。

このように、ほかの言葉で言い換えができる「こと」の使用には注意しましょう。なかでも、特に意識するべきなのは「~ようなこと」という使い方です。

例文D

廊下を走るようなことがないようにしましょう。

犯罪を黙認するようなことは許せません。

焦って行動するようなことは避けるべきです。

例文Dのような文を口語として利用することはあるでしょう。しかし、文語としてはあまり褒められる書き方ではありません。特に、ライティング案件では、なるべく避けるべき表現です。

「こと」を使い過ぎないように注意が必要というだけではなく、「ような」という曖昧な表現が含まれている点も見逃せません。さらに、「~ようなこと」を使うと、文が長くなります。冗長な文というのは、それだけで読者の読む気を奪ってしまうのです。例文Dの文なら、次のように直すことができます。

例文E

廊下を走らないようにしましょう。

犯罪の黙認は許せません。

焦って行動するのは避けるべきです。

「こと」や「ようなこと」を使わなくても、文としてきちんと成立します。使いやすい書き方や便利な書き方が、そのまま「良い文」の書き方とは限りません。「こと」については、口語と同じ調子で文章を書くと、繰り返し使ってしまう可能性が高いため、普段から使い過ぎないように意識しておくことをオススメします。

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