客観か主観か?重要なのは混ぜないこと【前編】

テクニック(右腕)

今回は、「客観と主観」に関するお話です。

文章には必ず「視点」があります。どのような視点から書かれた文章なのかで、内容は大きく異なります。視点は「主観」「客観」の2種類に分かれます。

文章を書くうえで、主観と客観のどちらかが優れているということはありません。それぞれに効果的な使い方があるため、書き手が必要に応じて使い分けることが肝心です。

ただし、ライティングにおいては主観と客観を明確に分けて考える必要があります。なぜなら、主観的な文章と客観的な文章では、「信頼性」に大きな違いが出るからです。

「主観的」「客観的」とは?

主観的な文章の代表は「日記」です。日記に書かれる文章は、自分が自分のために書きます。そのため、どこまでも主観的な文章であり、そこに「信頼性」は必要ありません。自分が見たことや感じたことを買い込めばよいため、「それが正しいか」と問われることもないからです。

逆に客観的な文章の代表は「論文」でしょう。書き手の思い込みを徹底的に排除し、誰が読んでも正しいことがわかるように書くべきだからです。多数の根拠やデータを提示することで、「この文章は著者の空想ではない」と証明することが求められます。

一般的な文章は、日記ほど主観的ではありませんし、論文ほどの客観性は必要ありません。ただし、「客観的か主観的か」によって、読者の受け取り方が大きく違ってきます。

例文A

ペットとして犬を飼う人は多い。ほかの動物と比べ、犬は人間とともに生活することに馴染むところがあるからだ。たとえば、しっかりと躾をすることで、食事やトイレなどのルールを守らせることができる。また、序列を認識することができるため、主人の命令に対して素直に従うという面もある。犬種によっては、気性も穏やかなものもいるため、子どものいる家庭で飼われることも少なくない。

例文B

犬をペットとして飼うのはとても素敵なことだ。人懐っこくて、部屋のなかでも後ろをついて歩いたりする。たまに粗相をすることもあるが、それは飼い主の躾次第だろう。何よりも、犬はきちんと言うことを聞いてくれる動物だ。芸を仕込んだり一緒に遊んだりもできる。子どもの友人としても、犬という動物は最高の存在である。

AとBの文章は、内容としてはほぼ同じです。しかし、文章の印象はまったく違います。特徴としては、例文Aは「コラム風」であり、客観的な書き方です。その一方で、例文Bは「ブログ風」であり、主観的な文章になっています。

客観的な文章と主観的な文章では、どちらが優れているということはありませんが、「どんな読者を想定すべきか」に大きな違いがあります。

例文Aは、これから犬を飼うべきかどうか迷っている人に向けた文章です。逆に、例文Bはすでに犬を飼っている人に共感を与える文章になっています。それぞれ訴求する相手が異なるため、目的に応じて使い分けなければいけません。

客観的な文章は必須

ライターの仕事として文章を書く場合、「客観的な文章」を求められることが圧倒的に多いです。そのため、客観的な文章の書き方をしっかりとマスターする必要があります。

客観的な文章と主観的な文章の違いは、第一に「普遍的な事実にもとづいて書いているかどうか」です。わかりやすく例文AとBを比較してみます。

例文Aでは、「ほかの動物と比べ、犬は人間とともに生活することに馴染むところがある」と、一般に通じる内容で書かれています。その一方で、例文Bでは「人懐っこくて、部屋のなかでも後ろをついて歩いたりする」という、誰か(通常は書き手自身)の経験が述べられているだけです。同様に、例文Aでは「子どものいる家庭で飼われることも少なくない」という事実を述べているのに対し、例文Bでは「子どもの友人としても、犬という動物は最高の存在である」という個人の考えを書いています。

ハッキリ言ってしまうと、仕事として書く文章では、ライターの意見は必要ありません。必要なのは、誰にとっても変わらない事実――情報です。そのため、主観的な文章よりも、客観的な文章が求められるのです。

客観的な文章と主観的な文章の第二の違いは、「根拠を示すかどうか」という点にあります。例文Bでは、「犬はきちんと言うことを聞いてくれる動物だ」と述べていますが、その理由は示されていません。例文Aでは、「序列を認識することができるため、主人の命令に対して素直に従うという面もある」という形で根拠を提示しています。根拠が有無は文章の信頼性や説得力を左右します。 用いられる根拠がしっかりしたものであるほど、客観性は高くなります。具体的な例や数字、データを根拠として提示すれば、文章全体の信頼性も上がるわけです。そのため、提示できる根拠がある場合には、積極的に示していくほうがよいでしょう。

後編へつづく

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