インパクトはあるけれど……最上級表現は危険!

テクニック(右腕)

今回は、ライティングにおける「最上級表現」に関するお話です。

最上級表現とは、たとえば「業界初」「世界最大の○○」「過去最高」といった表現です。こうした表現は、広告などではよく使われるフレーズであるため、ライティングにおいても使いたくなる人も多いでしょう。

たしかに、最上級表現は読者にインパクトを与えます。世界最大と言われれば自然と興味が湧きますし、史上初と聞けば何か途方もないものだと感じるからです。ライターにとって、読者の目を引く文章を書くというのは至上命題であり、強い印象を与える言葉を利用したくなる心情はわかります。ただ、こうした表現を利用するリスクについて、あまり理解していない人も多いようです。

内容が間違いになるリスク

最上級表現のもっとも一般的なリスクは、「時間が経つと訂正が必要になる」という点でしょう。

  • 日本一の高さを誇るビルは、サンシャイン60だ。
  • 日本一の高さを誇るビルは、東京都庁第一本庁舎だ。
  • 日本一の高さを誇るビルは、横浜ランドマークタワーだ。

この3つの文は、どれも「かつて正しかった」内容です。サンシャイン60も東京都庁第一本庁舎も横浜ランドマークタワーも、かつて日本でもっとも高いビルだと言われていました。しかし、現在はあべのハルカスが日本でもっとも高いビルとなっています。

最上級表現は、何らかの理由によって「間違い」になってしまう可能性があるのです。特に、人工物や人が運営する組織などに関するものは、時間の経過によって「最上級のもの」が入れ替わることがしばしば起こります。

そのため、文章を書いた当時は妥当だった最上級表現が、現実の変化によって不適切な表現になってしまうことがあるのです。もし、「○○は世界最大だ」という内容が文章の主要な内容に含まれていた場合、文章全体が間違いや矛盾を生み出す危険性があるのです。

事実と異なる内容を書くリスク

また、最上級表現は単純に間違いが起こりやすいという問題もあります。たとえば、「史上初」という最上級表現は、上記のような間違いは起こりません。「歴史上初めて○○した」という事実は、将来的に塗り替えられない事実だからです。たとえば以下のような表現です。

  • ソチオリンピックのフィギュアスケートで、羽生結弦選手が金メダルを獲得した。これは日本人初の快挙だ。

この内容が正しいなら、どれだけ時間が経過しても、あとから間違いになることはありません。しかし、この文章は間違いです。なぜなら、オリンピックのフィギュアスケートにおける日本初の金メダリストは荒川静香選手だったからです。羽生結弦選手は、オリンピックのフィギュアスケート「男子」で初の金メダリストでした。

このように、最上級表現は「その内容は本当なのか?」という点を強く問われます。ところが、それを確認するのは容易ではないという場合も少なくありません。「史上最年少」といった表現も使い方が難しいでしょう。「過去にもっと若い人が達成した記録はないのか」を調べるのは、可能だったとしても大変な労力が必要になるはずです。

こうした問題があるため、ライティングにおいて最上級表現は極力避けるほうがよいでしょう。そもそも最上級表現というのは、「これはすごいものだ」ということを強調する場合に使うものです。ただ「すごい」ことを表現するなら、ほかにいくらでも表現方法はあります。

「国内最大」ではなく、「国内有数の大きさを誇る」と書けばよいのです。「世界初」などと付けなくても、金メダルを獲得したこと自体が充分な快挙になります。「史上最年少」ではなく、実際の年齢を書けば、「若くして素晴らしい偉業を成した」ことは伝わるものです。

最上級表現に限らず、強いインパクトがある言葉には、それだけ正確性が求められます。よほど自信がある場合は別ですが、安易に最上級表現を用いないようにしましょう。

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